昼下がりのハロウィン
「Trick or treat?」自分以外、誰も入れていなかった筈のこの部屋に、ふとその声が響いた時の雲雀の心境は。
(来たか。)
と、いうものだった……。
昼下がりのハロウィン
「何のつもり?」
毎日放課後になると並中の応接室に訪れる黒曜の会長代理を務めるこの男は、何度風紀委員達に出入り口を見張らせようと、その隙間を掻い潜るように何時の間にかするりと入り込んでくるのだ。
彼らを倒すことなど、骸にしてみれば何の障害にもならないだろうに。
「いえ、せっかくなので、雲雀君と一緒にハロウィンを楽しもうかと思いまして。」
「生憎、僕には全くそんなことをする心算はないよ。」
いつもの喰えない笑みを浮かべて言う骸に雲雀は即座に一蹴する。
「まぁ、そう言わずに。」
そう言うと、骸は笑顔を崩さず、ふてぶてしくも、雲雀とテーブルを挟んだ向かい側に据えられたソファに堂々と腰を下ろす。
「イベントを、好きな相手と共に過ごしたいと思うのは当然の事でしょう?」
「戯言を。」
またもや一蹴するも、持っていた書類に俯き加減で目を通す雲雀の耳元が赤くなっている様を、骸は見逃さなかった。
「大体、僕がお菓子なんて持っていないのは分かってたでしょ。」
顔を上げ、少し視線を険しくさせるが、骸は全く怯む様子を見せない。
どころか、
「なので、雲雀君の為にお菓子を持ってきました。」
と、少しはずんだ声で答える骸に、雲雀は唯々呆れるしかなかった。
「意味が分からないよ……。」
思わず片手で顔を覆うように、指先で額を押さえる。
対して、それを見た骸は至極楽しそうにポケットに入れていた一口サイズのチョコレートを取り出すと、ソファから立ち上がり雲雀の方へと向かう。
「ですから、こうすれば、雲雀君からお菓子、貰えるでしょう?」
雲雀は目の前に立った骸に対し、億劫そうに顔を上げて問うた瞬間、
「何を……。?!」
骸は少し開いた雲雀の口に個装から出したチョコレートを放り込んだ。
「ちょっ…何する…んんっ?!」
雲雀が驚いている隙に、骸は雲雀の後頭部に手を回し口付けると、薄く開いたままだった口の中に舌を滑り込ませ、チョコレートと一緒に、暫し雲雀の舌と己のそれとを絡み合わせる。
「ふっ……んっ…んんっ……ぁっ…!」
雲雀の口から甘い声が零れ、軽く淫らな水音が静かな部屋に響く。
どちらのものともつかない唾液が、雲雀の口端に筋を引いた。
そして、骸は半分溶けたチョコレートを自分の口の中に含めると、素早く身を引き、雲雀のリーチから更に1歩分離れた。
「ね?ちゃんと、雲雀君からお菓子、貰えたでしょう?」
ついでに雲雀君もちょっと貰っちゃいましたけど。と、唾液に濡れた唇を舌で舐め取りながら、正にイタズラが成功した子供の様な笑みを浮かべた骸に。
「……咬み殺す。」
と、暫し放心状態にあった雲雀が低く響く声音で言い放ち。
顔を赤くした並中風紀委員長と、笑みを浮かべた黒曜会長代理が、命がけの鬼ごっこを始めたとか。
そんな、周囲の人間にとっては恐怖でしかない、昼下がりのハロウィン――。
ハロウィン企画、骸ヒバver.です。
甘くもほのぼのでも無い気がしてきました…。スミマセン。
H19.11月末までフリー配布です。
報告は自由ですが、あれば管理人が泣いて喜びます!
では、お粗末さまでした。
甘くもほのぼのでも無い気がしてきました…。スミマセン。
H19.11月末までフリー配布です。
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