雲雀にとって理解不能な男。
―――ある休日。雲雀は町に出て、群れている奴らを狩った後、彼のお気に入りである、人気のない公園に来ていた。
周りに人が居ないのは確かめたハズだった。しかし、
「こんにちは、雲雀君。」
その声は彼のすぐ後ろから聞こえてきた。
「?!」
気配に気付かず、あっさりと背後を取られたことに驚きつつも、雲雀は反射的にトンファーを構え、振り向き様に攻撃を仕掛ける。
しかし、一瞬見えたあの南国フルーツのような髪型をした男は、彼の行動を予測していたのか、あっさりとかわした。
『攻撃と防御は同時には出来ない。』
その言葉通り、攻撃する瞬間が一番無防備になるのだ。
その隙を見逃してくれるような相手ではなく、
もともとそんなに開いていなかった距離を詰められ、
唇に、相手のそれが、重ねられる。
突然の唇の感触と近づきすぎて焦点の合わない視界に、雲雀は一体何が起きたのか分からず、頭の中が真っ白になり、動きが止まる。
彼が再び攻撃する事を思い出す直前、その男は離れ、雲雀のリーチから外れた。
「では、Arrivederci.」
骸は、いつも通りの微笑を浮かべると、踵を返し、去っていった。
しかし、未だ状況を飲み込めていない彼に、追いかける、という考えは浮かんでこなかった。
(・・・あの男・・・・・・。一体何を考えているんだ?!)
突然現れ、そして去っていった黒曜のトップである男の思考回路は、雲雀にとって理解不能なものだった・・・。