Whimsically.

応接室での蜜事。

並中の中で唯一誰の邪魔も入らない場所。

――応接室。


黒い革張りの3人掛けの大きなソファ。

それに座る黒いひとつの影と。
その足元に跪くように屈み込むもうひとつの影。

今、此の部屋に存在するのはその2人の人物と。
響く濡れた卑猥な音とかすれた甘い喘ぎ声だけ。

「ふっ……ぁ…やぁっ…!」
「ん……ヒバリ可愛い…。」

山本は肌蹴させたシャツ以外何も身に着けていない雲雀の両脚を立てて広げさせ、その間に顔を埋める。

雲雀を煽るようにわざと音を立てて舐めて、くわえて、吸って、擦って。

雲雀の手は山本の髪を乱すようにその激しく動く頭に添えられている。

「やめっ……んぁ…あぁっ!」
「……そんな事言って。此処で止めたらヒバリだって辛いだろ?」

雲雀の自身は既に完全に勃ち上がり、微かに震え先走りを漏らしている。

しかし、此処が学校だという事が頭から抜けないのだろう。
雲雀はしきりに山本を止めようとする。

「んっ……ぁっ…でもっ…!」
「……恥ずかしい?」
「……っ…!」

山本が見せ付けるようにして、雲雀の精液に濡れた指先を舐めとると、雲雀の顔が一気に紅潮し、視界から外すように、顔を背ける。

それに僅かに苦笑を漏らし、行為を続行する山本。

「大丈夫。最後までは…しないからさ。」
「…ぁっ……ぁあっ……!」

そんな山本の言葉にも、もう雲雀は喘ぐ事しか出来なくなっていた。

「…ん……ヒバリの、甘い…。」
「やっ……そ、んな……もっ…!」
「もぅ、イキそう?」
「ん……んっ…!」

懸命に首を縦に振る雲雀。
山本がそれに応えラストスパートをかけようとした、丁度その時。


コンコン


「!!」
「…誰か、来たみたいだな。」

雲雀はとっさに両手で口を塞ぎ、山本も動きを止め声を顰める。

「委員長、よろしいでしょうか。」
「……草壁さんか…。どうする?」

このままやり過ごすか、行為自体を止めるか。

しかし、既に2人共止められるような状態では無い。

そんな中、1人室内の状況を知らない草壁は持って来た書類だけでも置いていこうとでもいうのか、しきりに入室の許可を求める。

「委員長?いらっしゃれないのでしたら……」

草壁がドアノブに手を掛ける気配。

「「!!」」

ヤバい!と内心で叫び、山本はこの状況をどうにか隠せないかと思考を巡らせるが、焦った頭は上手く働いてはくれない。

しかし、そこで。

「いるよ。」

普段通りの凛とした雲雀の声がドアの外まで響いた。

草壁の動きが止まったのが、気配で分かった。

「今、取り込み中なんだ。後にして。」
「はっ。失礼しました。では、何時頃が宜しいでしょうか。」
「急ぎなら、放課後に。そうじゃなければ、明日。」
「はっ。では、また明朝お伺いします。」
「うん。」

失礼しました。と、いう声と共に人が離れていく気配。

その気配に山本はほっと安堵の溜め息を洩らす。

「はぁ~。なんとかなったぁ……。」
「君は何もしてないけどね。」

そう言いつつも、雲雀自身もかなり無理をしていたのだろう。
先程までの行為の余韻もあり顔が紅潮し、息も荒い。
イク直前で止められたのだから、当たり前なのだが。

「……ねぇ、早く。」
「もう、我慢出来ない?」

くすりと笑って揶揄かうように言えば、潤んだ目で睨まれた。
しかし、それにも効果は無く、逆に山本の性欲を煽るだけの結果になるという事を雲雀は知らない。

「大丈夫。俺も、もう余裕なんか無いからさ。」

何が大丈夫なんだ。と、反論したかったが、それも再開した山本の動きに阻まれる事になる。

「…ぁあっ……!」

その間に山本はベルトを外し、自分の自身を取り出すと、ソファの上で2人が向かい合わせになるように、体勢を入れ替える。

山本は胡座をかき、その上に雲雀を乗せるように抱きしめて座る。

雲雀が縋るように山本の首に腕を回すと、山本は2人のたかぶったソレを重ね、まとめて扱き上げる。

「んっ…ぁ……ぁあっ…!」
「くっ……。」

熱と熱が触れ合い、今まで以上の快感が全身に走る。

「や……ぁあっ…んっ……もっ…むりぃ……!」
「はっ……俺、も、もっ限界…!」

一時行為を中断させられた事でじらされた体が絶頂まで昇り詰めるまでに、そう時間は掛からなかった。

「イッ…ぁっ……イクぅ…!」
「ん……一緒に…。」

山本は手を動かすスピードを上げ、追い上げ、追い詰めた。

「ひぁっ…あっ……ああぁぁぁっ…!」
「くぅっ……!」

雲雀の口から一際高い声が漏れ、山本の手の中に2人分の白濁が零れた。

「…はっ…あっ…あぁ……。」

力の抜け切った雲雀の体を包み込むようにして、ソファに横たわる。

絶頂の余韻で僅かに痙攣する体。
白いその痩躯がひたすら愛おしく、労るように抱き締める腕に少し力を込めた。

「…雲雀。大好き……。」

言葉は返って来なかったけど、真っ赤だった雲雀が更に赤くなって、腕の中で微かに頷く気配が伝わってきだけで、満足だった。